げーむ の はなし を しよう

邦洋デジアナプラットフォームジャンル関係なくゲームが大好き過ぎるダメ人間が綴るブログ

ゲームの“時限独占”って、そんなに悪いことかしら、と考えてみた

皆さんこんにちはこんばんは、あやさわ(@ayasawa_s)です。

最近、ゲームに関する話題で“時限独占”というワードを頻繁に耳にするようになりました。

時限独占とは、あるゲームソフトが、単一のプラットフォーム上で“一定の期間”販売・配信されることを指します。その一定期間を過ぎるまでは、他のプラットフォームには一切そのタイトルが提供されることはありません。

通常、この時限独占という言葉はネガティブなニュアンスで使われることが大半で、直近では『シェンムーIII』が結構炎上していました。

www.4gamer.net

シェンムーIII』はかつてドリームキャストで発売されたセガの伝説的なアクションADVの最新作で、簡単に言えば『龍が如く』シリーズのご先祖様のような作品です。

この『シェンムーIII』の開発は、クラウドファンディングで開発資金を募るところからスタートしており、開始から1日も経たないうちに初期の目標金額を達成。

その後ストレッチゴール(金額ごとに成果物が増えていく仕組み)を追加し、最終的には日本円で8億円近い支援額をかき集めています。

それだけの期待を受けている『シェンムーIII』ですが、先の“E3 2019”での発表で、「PC版は(PCゲームプラットフォームの)『Epic Games Store』での時限独占販売となる」と発表。

これが主に支援者から大ブーイングを受けており、一部の支援者からは支援金の返還要望が上がっているなど、かなりの大事に発展してきています(ただ『シェンムーIII』の場合、少し事情が複雑な面がありますが、それについては後述します)。

しかし、何故時限独占は評判が悪いのでしょうか。

これは端的に言えば、消費者であるユーザーから、ゲームを遊ぶための選択肢を奪っているからというに他ならないでしょう。

時限独占=悪?

一般的には、一人のゲームユーザーが持ちうるゲームのプラットフォームというのは、そんなに多くはないはずです。

「あなたは幾つのゲームプラットフォームを持って(使って)いますか?」という問いに対して、答えが返ってくるのは精々2つ、多くても3つ程度なのではないでしょうか。

これは基本的に「ゲームプラットフォームはハードウェアとイコールになっている」という部分が大きいです。

多くの場合、特定のプラットフォームを利用するためには特定のハードウェアの所持が前提になっており、そしてゲームハードというのは決して安い買い物ではなく、複数台持ち合わせるのはあまり現実的ではありません。

「私はPlayStation4を所持している」という人が、「『Halo Infinite』をプレイしたい」という場合、「なのでXbox ONEを購入する」というユーザの割合は、「Xbox ONEを所持していないので購入を諦める」というそれよりも少なくなるはずです。何故ならPlayStation4にしろXbox ONEにしろ、ハードのために数万円のコストを払う必要があるためです。

そういった事情でユーザーが分断されている以上、販売側は利益を最大化するために、単一のタイトルを複数のプラットフォームで展開することを余儀なくされています(マルチプラットフォーム)。ただこれは、ユーザーからしてみれば歓迎すべきことでしょう。

しかしタイトルによっては、ある特定のプラットフォームでのみ発売されるものがしばしばあります。これは単純に“独占販売”と呼ばれています。

あるゲームが特定のプラットフォームで発売される時、そのゲームは主にそのプラットフォーム(あるいはハードウェア)ベンダーから、ゲームの開発製造において何らかの支援を受けていることが大半です。

独占販売は、言うなれば支援を受ける見返りというわけですね。別のパターンとしては、デベロッパーがハードウェアベンダーの子会社だったり関連会社だったり(すなわち他のプラットフォームに提供する義理がない)というものもありますが。

さて、通常独占販売されるタイトルについては、それ自体に非難が浴びせされることはそんなに多くありません。まあ、ネット上では色々言われたりすることもありますが……。

理由は簡単で、上でも述べましたが「遊ぶためのハードがないので購入を諦める」というユーザが多数を占めているからです。

もちろんその逆のユーザーも一定以上いるわけですが、いずれにしたところで、彼らから「何故(自分の持っている)ハードでゲームを出さないのか」という声が挙げられる事はありません。え? いや、だからネットの話は置いといて……

しかし、時限独占では少々話が異なってきます。

時限独占の場合、一定期間を過ぎれば独占は解除され、複数のプラットフォームで販売・配信が行われるようになります。

一見すると、独占タイトルとして発売されるよりもマシなように思えるのですが、ユーザーの心理としては「複数のプラットフォームに展開できるのなら、何故そうしないのか」という風になるわけです。

ゲームソフトというのはある種旬物の部分もあり、ゲーマーであれば皆、最新のタイトルを遊んでみたいと思うものです。それを踏まえれば、「今持ってない人でも後で遊べるよ」と言われても、納得できない部分が出てくるのは当然のことでしょう。

でもPCは例外のはずでは?

さて、ここまでの話を読んで、どこか腑に落ちないと思われた読者さんもいるのではないでしょうか。

お気づきかもしれませんが、上で僕が今まで話してきた事は、全てコンシューマー向けゲームでの話で、PCゲームにおいては当てはまらない部分がかなりあります。

最大の違いは、「プラットフォーム=ハードウェア」の図式が、PCゲームでは全く意味を持たないという点です。

現在、PCゲーム向けのプラットフォームは群雄割拠の時代を迎えています。

有名どころではSteam、Origin、Battle.net(Blizzard)、UBISOFT Storeといった大きなものから、GOG.comやHumble Bundleといったコアなものまで、枚挙にいとまがありません。

しかし、これだけ多数のプラットフォームが存在していたとしても、ユーザが持たなければならないハードウェアはPCただ一つのみです。

つまり、特定のプラットフォームでしか販売されないタイトルがあったとしても、そのプラットフォームを随時利用するようにすれば、理屈としては遊べないゲームはないということになります。

となると、少なくともPCゲームに限っていえば、時限独占というのは瑣末な問題のように感じられます。

実際、僕自身も上記のPC向けプラットフォームは大体すでに利用している(そして使い分けをしている)ので、なぜこんなに騒がれることがあるのだろうと思う部分もありました。

しかし少し調べてみると、「あぁ、これは難しい問題だなぁ……」と考えさせられたわけです。

後出しジャンケンはダメだよねそりゃ

ここで、冒頭の『シェンムーIII』の話に戻ってきます。

シェンムーIII』が炎上した件では、まず前提として“開発資金はクラウドファンディングで集められた”というところに注目する必要があるでしょう。

クラウドファンディングにおいては通常、支援者に対して「支援してくれた人にはこういう特典を差し上げます」というリターンが定められています。

シェンムーIII』の場合「PC版についてはSteamにて販売する」というリターン内容だったのですが、しかしここにきて、突如Epic Games Storeでの時限独占販売という発表が行われました。

ここで問題なのは、通常のゲームと異なり、支援者は『シェンムーIII』というプロダクトに対してすでにお金を支払って(支払ってしまって)いる状態だということです。

支援者からしてみれば、「PC版がSteamで販売されると聞いて出資したのに、約束が反故にされた」と感じるのは当たり前のことです。

仮にエクスキューズとして「いや、Steamでも後に販売されるのだから問題ない」とされても、もちろん納得できませんよね。下手をすれば詐欺と同じことになってしまいます。

出資、というとピンとこないかも知れませんが、これをゲームの予約購入に当てはめてみるとどうでしょうか。普通のユーザーの立場から見ても、とても認められないという事は想像に難くないはずです。

囲い込みは善か悪か

実は最近、このようにクラウドファンディングを行なったタイトルの不可解なプラットフォーム時限独占の話が相次いでいます。最近だと『Metro Exodus』の話題が記憶に新しいですが、それらの騒動の中心にいるのがEpic Games Storeです。

www.epicgames.com

Epic Games StoreはPC向け大手プラットフォームとしては最新興のもので、名前が示す通り運営はEpic Gamesが行なっています。あの『Fortnite』の開発元だといえば、わかる方もいるでしょうか。

これまでに『Division 2』や『World War Z』などの既発のものや、『Borderlands3』といった前評判の高い人気作を独占タイトルとして扱っており、新参ながらも既存のプラットフォームの牙城に急速に切り込んでいっています。

ここで疑問なのは、「何故デベロッパーは時限独占の供給先にEpic Games Storeを選ぶのだろうか」というところでしょう。何故ユーザー数の多い最大手ではなく、あえて新興のEpic Games Storeなのか?

それに答えてくれるアーティクルがあります。

www.4gamer.net

www.gamespark.jp

掻い摘めば、時限独占供給の見返りに売り上げをある程度Epic Gamesが担保する、という事です。他にはない格別の条件を叩きつけて、タイトルを囲い込んでいるというわけですね。

しかしGame*Sparkの記事にある「たとえ現在の予約を100%返金したとしても、なお黒字になる」という文言が衝撃的です。これが事実なら、デベロッパーにとっては実に有意義な契約ですから、これに乗らない手は正直ないと言えるでしょう。

さて、このEpic Games Storeの囲い込みが、果たして善か悪か、と論じるのは、実に難しい部分があります。

上述した通り、ゲームを作る・売る側にとってはメリットが大きい面があります。

デベロッパーにしてみれば、売り上げがある程度担保されていれば、たとえ初動の売り上げが芳しくなかったとしても、それを改善するだけの余力が与えられているということになり、挽回の余地が大きくなります。

また開発費の回収にある程度目処がつくというようになれば、これまで日の目を見ることがなかった独創的でチャレンジングなタイトルを開発しやすくなるということもあるかも知れません。

もちろんEpic Gamesとしても無節操にそういった施策は出来ないでしょうが、将来のハイセールスタイトルを、時期は限定的とはいえエクスクルーシブとできれば万々歳というところもあるはず。結果的にデベロッパーとWIN-WINの関係になることができるかも知れません。

で、視点を変えてユーザー側から見た場合ですが、これも一見問題が無いように見えます。先に述べましたが、PCゲーマーはプラットフォームを自由に選ぶ権利を与えられているように捉えられるからです。

しかし実際にはそう簡単な話ではありません。

PCゲームにおけるプラットフォームというのは、単なるゲームの販売所とは異なり、様々な機能を複合した一つのサービスとして機能しています。

代表的なものでは、ゲームを一緒に遊んだプレイヤーとフレンドになって親交を深めたり、一緒に遊びたいゲームを気軽に親しい人にプレゼントすることも出来たりするソーシャル機能が挙げられるでしょう。

もちろん、これらはプラットフォームごとに機能しており、それを他所に持ち出す事は出来ません。つまり、プラットフォームを変更するという事は、それらを一時的にでも捨てることになります。

僕のように、ゲーム上でのフレンドがほぼ全くいなかったり(悲)、たとえプラットフォームを変えたとしても一緒に付き合ってくれるリアル友人がいる人なら問題はないかも知れません(中々いませんけどね)。

が、ネットワーク上での付き合いしかない友達に「このゲームを遊びたいから一緒にプラットフォームを移らないか」とお願いするのは、正直かなり難しい面があると思います。

また、タイトルごとの実績の収集機能やゲームソフトのライブラリの管理など、一つに統一しておきたかったり他所に移すのが難しい要素が多いため、結局特定のプラットフォームを選んで使うユーザーが多くなりがちです。

この状態で時限独占となると、結果的にはコンシューマーと同じく、「何故プレイできるようにしないのか」という非難が上がることになるのです。

要はやり方次第だ

ここまで色々書き連ねて思ったのですが、要はやり方次第なんですよね、きっと。

今回の『シェンムーIII』(を始めとする一連のタイトル)の件は、クラウドファンディングでの資金収集を行なっているという関係上、「突然のプラットフォームの制限は道義上許されないのではないか」という声に晒されるのは仕方がなく、またこれについては一切擁護出来ません。

Epic Games側が、予め話題になったタイトルではなく、自社で発掘したタイトルに対して見返りを支払うということであれば問題無いように感じるのですが、現状では「やり方が汚い」という誹りは正直免れないでしょう。

ただ、Epic Gamesの行なっている提案自体はそんなに悪いものではないとも感じています。上手くすれば業界の活性化につながる面もあるでしょうし、一概に否定するというわけにもいかないのではないでしょうか、というのが個人的な総評です。

ただ、Epicさんはタイトルの囲い込みよりもStoreの使い勝手を向上するのが先じゃないかなぁ。今回叩かれてるのも、何でプラットフォームとして機能の劣る方に独占提供すんだよ、って部分もあるみたいですしね……。

何にせよ、皆さんは“時限独占”についてどうお考えでしょうか? それではまた!